2026年9月23日、YouTubeはニューヨークで年次イベント「Made On YouTube 2026」を開催しました。

今回の発表は、YouTuberはもちろん、企業YouTubeを制作・運用している担当者にとって非常に重要な内容です。

動画そのもののA/Bテスト、視聴者に合わせたサムネイルの最適化、AIによるYouTube Studioの分析支援、Shortsのシリーズ化、クリエイターコンテンツと広告の連携、YouTube Shoppingの日本での拡張など、動画制作から広告・販売まで幅広いアップデートが発表されました。

個々の新機能も重要ですが、今回の発表から見えてくる最大の変化は別のところにあります。

これまでのYouTube運用は、

「企画する」
↓
「動画を制作する」
↓
「サムネイルを作る」
↓
「公開する」
↓
「結果を分析する」

という流れが一般的でした。

しかし今後は、

「複数の仮説を作る」
↓
「YouTube上でテストする」
↓
「データから最適化する」
↓
「成果の良い企画をシリーズ化する」
↓
「広告やShoppingまで展開する」

という運用へ変わっていく可能性があります。

つまり、企業YouTubeでも「良い動画を1本作る」だけではなく、「仮説を立て、検証し、改善を繰り返す」ことがこれまで以上に重要になるということです。

今回はMade On YouTube 2026で発表された内容から、日本の企業YouTube制作・運用に特に影響が大きいものを厳選して解説します。

サムネイルは「正解の1枚を選ぶ」時代ではなくなる?

まず注目したいのが、YouTube Studioにおけるサムネイル関連機能の進化です。

YouTubeではすでに、複数のタイトルやサムネイルを比較するA/Bテスト機能が提供されています。

YouTubeによると、2024年の正式リリース以降、このA/Bテストは4,000万回以上利用されています。

そして今回、さらに一歩進んだ「ダイナミックサムネイル」が発表されました。

複数のサムネイル候補を用意し、視聴者層に応じて効果の高いクリエイティブを提示していく方向です。

参考:YouTube公式

これまで企業YouTubeでは、

「この動画に一番強いサムネイルはどれか?」

を考えるのが一般的でした。

しかし今後は、

「誰に見せるかによって、強いサムネイルは違う」

という考え方が重要になる可能性があります。

「色違い3案」ではなく「訴求軸の違う3案」を作る

この変化は、サムネイル制作の方法にも影響します。

例えば住宅会社の動画なら、

A案:価格を前面に出す

B案:家づくりの失敗を前面に出す

C案:完成した住宅の魅力を前面に出す

というように、同じ動画でも異なる興味を持つ視聴者へ向けて訴求を変えられます。

これまでよくあった、

「文字を黄色にしたA案」

「文字を赤にしたB案」

「人物を少し大きくしたC案」

という程度の違いではありません。

それぞれ、

「価格が気になる人」

「失敗したくない人」

「理想の家を見たい人」

という異なる視聴動機を想定してサムネイルを作ります。

企業YouTube制作でも今後は、

「本命サムネイル1案+微調整案」

ではなく、

「異なる仮説を持った3案」

という制作方法へ変えていく価値があります。

ついに「動画本編」もA/Bテストへ

今回のMade On YouTube 2026で特に注目したいのが、動画本編そのものを比較するA/Bテストです。

YouTubeは、同じ企画について最大3つの異なる動画カットをテストし、どのバージョンが視聴者からより良い反応を得るか確認できる仕組みを順次展開すると発表しました。

これは企業YouTube制作にとって非常に大きな変化です。

これまでも、

タイトル

サムネイル

については比較テストが可能でした。

しかし、

「冒頭をどう始めるか」

「どの順番で情報を出すか」

「どこまで前置きを削るか」

といった編集については、制作担当者の経験や過去データをもとに判断することが中心でした。

今後は、動画の構成そのものを実際の視聴者反応で比較できるようになります。

「企業名から始めるか、本題から始めるか」も検証できる

例えば、同じ企業動画でも、

A:最初に結論を見せる

B:視聴者の悩みから始める

C:最も印象的なシーンを先に見せる

という3種類を制作できます。

企業動画では、

会社ロゴ
↓
挨拶
↓
出演者紹介
↓
今回の企画説明
↓
ようやく本題

という構成になってしまうことがあります。

一方、別バージョンでは、

いきなり結論
↓
理由
↓
会社・出演者紹介

とすることもできます。

これまでは「こちらの方がYouTubeでは強いはず」と経験則で判断していました。

今後は実際の視聴データを使って、どちらが視聴者に受け入れられるのか検証できるようになります。

視聴維持率改善が「経験と勘」だけではなく、「テストと検証」の世界へ入っていくことになります。

「制作して納品」で終わる動画制作から変わる

この変化は、企業が動画制作会社へ依頼する内容にも影響します。

従来は、

企画
↓
撮影
↓
編集
↓
納品

で一つの仕事が完了するケースが多くありました。

しかしA/Bテストを前提にすると、

企画
↓
複数の編集仮説を制作
↓
公開
↓
視聴データを分析
↓
改善
↓
次の動画へ反映

という継続的な運用になります。

つまり、動画制作とYouTube運用の境界がさらに曖昧になります。

企業側にとっても「動画1本をいくらで制作するか」だけではなく、「チャンネル全体をどのように改善していくか」という契約の重要性が高まっていくでしょう。

Ask Studioが分析・企画・編集まで支援

YouTube StudioにもAI機能が大きく入ります。

新しい「インサイト」「リサーチ」では、過去動画のパフォーマンスを分析し、通常より突出して伸びた動画、いわゆる「Outlier」を発見しやすくなります。

例えば、

普段は1万回前後なのに30万回再生された動画

検索流入だけ異常に多かった動画

通常より新規視聴者を大量に獲得した動画

などです。

こうした「なぜか強かった動画」をAIが見つけ、次の企画へ活用しやすくなります。

さらにAsk Studioでは、公開前の動画について、

テンポ

構成

ストーリーテリング

などのフィードバックを行う方向へ進みます。

過去動画についても、新しいサムネイルを提案・テストし、再び新しい視聴者へ届ける支援まで行われる予定です。

参考:YouTube公式

AI時代にYouTubeプロデューサーの価値はなくなる?

ここで企業YouTubeを制作している人にとって気になるのが、

「AIが分析して企画まで考えるなら、YouTube運用会社は必要なくなるのでは?」

という点です。

実際、単純なAnalytics集計だけならAIでかなり自動化される可能性があります。

「CTRが低下しました」

「この動画の視聴維持率が高いです」

「この企画が他より伸びています」

といった分析だけでは、今後差別化が難しくなるでしょう。

その代わり、重要になるのが、

「なぜこの企画を企業としてやるべきなのか」

「どのターゲットを取りに行くのか」

「動画を問い合わせへどうつなげるのか」

「採用応募へどうつなげるのか」

「商品購入へどうつなげるのか」

というビジネス側の設計です。

AIが分析作業を自動化するほど、YouTubeプロデューサーには「動画の数字」と「企業の事業」をつなぐ役割が求められるようになります。

Shortsは「単発」から「シリーズ」へ

Shortsにも大きな変更があります。

YouTubeは「Shorts Series」を発表しました。

Shortsを「シーズン」「エピソード」という形でまとめ、カスタムサムネイルや連続再生などを使って、視聴者が次のShortsへ続けて移動できる仕組みです。

ウェブ、モバイルだけでなく、テレビにも展開されます。

参考:YouTube公式

YouTubeによると、2026年上半期のショートドラマは65億回以上再生され、総視聴時間は前年同期比50%以上増加しています。

さらにテレビ画面でのショートドラマ視聴は前年同期比90%以上増加しています。

もちろん、企業がショートドラマを制作しなければならないという意味ではありません。

重要なのは「連続して見てもらう」という考え方です。

企業Shortsにも「第1話・第2話」という発想を

例えば企業なら、

「新人社員の30日間」

「新商品ができるまで」

「職人の技 第1話〜第10話」

「知らないと損する○○講座」

「店舗の裏側7日間」

などが考えられます。

これまでShortsは、

「1本の動画で新規視聴者を獲得する」

という使い方が中心でした。

今後は、

1本目で発見
↓
2本目を見る
↓
3本目を見る
↓
出演者や企業に興味を持つ
↓
長尺動画を見る

という導線を設計しやすくなります。

企業Shortsでも、

「今月Shortsを何本投稿するか」

だけではなく、

「どんなシリーズを作るか」

を考えることが重要になってきます。

CTRも「1枚のサムネイルの数字」ではなくなる

ダイナミックサムネイルが本格化すると、CTRの評価方法にも影響が出ます。

従来は、

動画A
↓
サムネイルA
↓
CTR 5%

という非常に分かりやすい構造でした。

しかし今後、

新規視聴者にはサムネイルA

Returning ViewersにはサムネイルB

別の興味関心層にはサムネイルC

という最適化が進めば、「この動画のサムネイルCTRは○%」という一つの数字だけでは実態を説明しにくくなります。

重要なのは、

どの視聴者までインプレッションが拡大したのか

新規視聴者へ届いたのか

Returning Viewersが反応したのか

パッケージング変更によって総視聴時間がどう変わったのか

といったことです。

企業YouTubeでは今後も「CTRを最大化する」ことだけを目的にするのではなく、

「適切なCTRを維持しながら、インプレッションをどこまで広げられるか」

を見る必要があります。

YouTubeの「動画の探し方」もAIで変わる

今回、YouTubeのホームやおすすめを支える推薦システムそのものについて、大規模な変更が発表されたわけではありません。

一方で、視聴者が動画を発見する方法には大きな変化があります。

米国では「Custom Feeds」が導入されます。

例えば視聴者が、

「夜にゆっくり見られる長編ドキュメンタリー」

「新しいDIYクリエイターを見つけたい」

などと自然言語で指示すると、自分専用のYouTubeフィードを作ることができます。

さらに「YouTubeに相談」も拡張され、動画を見ながら商品について質問したり、商品レビューを比較したりする方向へ進みます。

日本での提供時期が未定の機能もありますが、大きな流れとして重要なのは、

「視聴者が自分の見たいものを文章でYouTubeへ伝える」

時代が始まっていることです。

参考:YouTube公式

企業動画は「何についての動画か」をより明確に

こうしたAIによる発見が増えると、企業動画でもテーマの明確さがさらに重要になる可能性があります。

例えば、

「新商品について紹介します」

だけではなく、

「初めて○○を購入する人が失敗しないための選び方」

というように、

誰向けなのか

何についてなのか

何が分かるのか

を明確にします。

これはタイトルへキーワードを大量に入れるという意味ではありません。

動画内の会話

字幕

チャプター

シリーズ構成

説明内容

まで含めて「この動画は何についてのコンテンツなのか」を明確にすることが重要です。

YouTube広告が「見る広告」から「質問できる広告」へ

Google広告側にも大きな変化があります。

9月24日のDemand Genアップデートでは、「Business Agent for YouTube Ads」が発表されました。

商品フィードを利用したYouTube動画広告を見ながら、視聴者がAIへ商品やブランドについて質問できる仕組みです。

例えば自動車なら、

「燃費は?」

「荷室はどれくらい?」

「上位グレードとの違いは?」

住宅なら、

「この設備は標準仕様?」

「価格はいくら?」

ECなら、

「サイズは?」

「在庫は?」

といった質問です。

現時点では、日本のすべての広告主がすぐ利用できる機能というわけではありません。

しかし方向性としては非常に重要です。

広告が「動画を見せて、詳しくはWebサイトへ」という一方通行のものから、その場で疑問を解消する体験へ変わろうとしています。

参考:Google公式

動画だけでなく「商品データ」も広告クリエイティブになる

Business Agentのような仕組みが普及すると、広告成果を左右するものも変わります。

これまでは、

映像

コピー

出演者

編集

CTA

など、動画そのものの品質が重要でした。

今後はそれに加えて、

Merchant Centerの商品情報

商品スペック

価格

FAQ

在庫情報

なども重要になります。

つまり「動画制作チーム」と「EC・Web担当」が別々に仕事をするのではなく、データまで含めて広告体験を設計する必要が出てきます。

またDemand Genでは、9:16のフルブリード画像広告を使ったYouTube Shortsで、1タップでランディングページへ移動できる体験も追加されています。

Shorts向けクリエイティブも、動画だけでなく縦型画像まで含めて準備する価値があります。

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